離職率の正常値ってどれくらい?離職率が高いとやっぱりブラック?

離職率の正常値ってどれくらい?離職率が高いとやっぱりブラック?のイメージ

新聞やテレビをはじめ、現在ではSNSなどを含むメディアを通じて「離職率」という言葉を頻繁に耳にするようになりましたよね。早朝から深夜まで勤務するような企業、各種ハラスメントが横行する企業、などを総じてブラック企業と呼ぶようになって久しいですが、離職率はそのような企業でこそ高いのでしょうか。この記事では、わかっているようで案外わかっていない「離職率」というテーマについて解説します。

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この記事のもくじ

離職率ってどうやって算出するもの?

厚生労働省が調査した結果によると、現在の日本における平均離職率は14.2%であり、前年と比較すると比較的下がって入るようです。ただし、これはあくまで平均値であり、業種によってその数値は大きく変動しているのが現状です。

参考:厚生労働省 令和2年就労条件総合調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf

それでは、離職率とはどのように算出されているのでしょうか。
厚生労働省の算出方法は「一定期間内の退職者数」÷「1月1日現在の常用労働者数(年齢階級別は6月末現在の常用労働者数を基準とする)×100という計算式です。
これは、ただ単に全体をもとに算出するのではなく、どのようなタイミングでどのような採用活動をした結果、どのような対象者が離職しているかを算出するためのものです。

令和2年の平均離職率は14.2%

令和2年の平均離職率は14.2%というのは前述しました。参考に過去のデータを見てみると、令和元年は15.6%、平成30年は14.6%、平成29年は14.9%となっており、平成18年から積み上げた15年のデータの中でも令和2年がもっとも低い数値を示しています。令和元年の15.6%がコロナ禍の影響であることは想像に易いですが、令和2年のこの低数値においては、長引くコロナ禍により離職を断念する方が増加したからかもしれません。ただし、あくまでも全体の平均値であり、年齢や雇用形態、業界や事業所の規模などによってバラつきがあることは理解しておきましょう。

大学卒業後3年以内の離職率は31.8%

厚生労働省によって、「新規学卒者の離職状況」という調査が毎年行われています。令和3年10月22日に発表された調査結果では、大学卒業後就職し、3年以内で退職した人は全体の31.2%でした。事業所の規模別の結果を見ると、1,000人以上が24.7%であるのに対し、5人未満の場合は56.3%と大きな差があります。もちろん、これは業界別でも離職率に差が出ています。離職率に限らず言えることですが、平均値だけで判断すると情報を見誤ってしまう可能性があるので注意しましょう。

参考:厚生労働省 新規学卒者の離職状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11652000/000845829.pdf

離職率が高まる、753(シチゴサン)現象って?

ニュースなどで耳にしたことがある人も多いと思いますが、近年の課題として入社後3年以内に退職する人が増えているということがあります。そして、その社会問題のことを「753(シチゴサン)現象」と言います。それぞれの数字は学歴別の退職率を表していて、中学校卒業者は7割、高等学校卒業者は5割、大学卒業者は3割の人が、入社後3年以内に退職しているということを意味しています。退職理由はさまざまだと思いますが、年齢が若い方が短期間で退職する人が多い傾向にあるようです。

離職率はどれくらいなら正常?逆に危険な数値は?

「離職率」という言葉が独り歩きし、また厚生労働省が具体的なデータまで出していると、「離職率の高い企業はブラック企業なんだ!」と決めつけてしまう方もいらっしゃいますが、それは決して感心できません。

離職率の高低については、令和2年の離職率=14.2%をひとつの基準値にはできますが、業界によっても高低の傾向が変わりますので、この基準値に業界の情報も取り入れて企業の離職率の高低を判断するようにしましょう。例えば、高卒・大卒ともに3年以内の離職率が50%超えの宿泊業・飲食サービス業において、企業の離職率が20%や25%であれば、基準値の14.2%よりも高くても離職率がそこまで高くはない=ブラック企業ではないかもしれない、と判断できます。逆に、離職率が10%前後と低い電気・ガス・熱供給、水道業において、企業の離職率が14%であれば、確かに基準値よりは低値ですがブラック企業の可能性も考えられます。

また、「企業そのものの体質が劣悪で離職率が高い」というケースばかりではありません。離職率が低く(つまり定着率が高い)退職する人の人数が著しく少ない場合でも、その社員たちの姿勢や業績によってもその意味合いは変わります。
高いモチベーションを持って、自分のキャリアや志を全うする社員が多い企業である場合、当然離職率はあがります。一方で、「この会社を辞めても次の仕事はそうそう見つからない…」という社員が多くはびこる企業も離職率は低く保たれます。大切なのは離職率の数値そのものではなく、どのような社員が企業を離れているか、なのです。

同様に、企業の規模が大きく社員数が多ければ離職率も高くなりますし、たとえ離職率が低い企業でも平均年齢が高い老舗で、年齢的に離職を検討しない方が多い可能性もあります。そのため、離職率だけで企業のブラック度を測るのはナンセンスです。

離職率が高い企業はこんな社風の可能性が…

「離職率が高い=劣悪な企業」と決めつけるのは早計と言えますが、やはりそれなりには根拠があっての高い離職率である場合もあります。離職率が高い企業であるとわかったときに、合わせて確認することでブラック企業なのかどうかを確認できる社風のポイントをご紹介します。

休暇を取りにくい

業務のメインが週末にあることで、必ずしも土日に休暇が取れない業種もあります。そのようなケースを除き、希望する日時での休暇が著しく取得しにくかったり、そもそも休暇を取ること自体が難しいような企業文化である場合は注意が必要です。休暇は、円滑に業務を進め、心身共にバランスを保つために必要不可欠なものなので、企業として積極的に取得させるべきものです。休暇を取りにくい、という社風だと、もしかしたらそれ以外の福利厚生面でもマイナス要素が隠れているかもしれません。

人を育成する文化がない

多くのブラック企業が抱える問題がここにあります。せっかく優秀な社員を採用しても、現場で育てる文化や能力がなく、結果的にみすみす採用した人材を転職によって逃してしまったり、伸びしろをなくしてしまうのです。企業によっては、そのような文化をわかった上で、予め多めに採用しておくと言った悪質な採用活動をしているところもあるようです。

働き方に多様性がない

かつての日本では、「女性は結婚したら退職する」「出産したら退職する」ということが当然のようにまかり通っていました。しかし、平成も終わろうとしている昨今、そのような考え方そのものがナンセンスと言えるでしょう。結婚、出産、子育て、親の介護などは女性だけが抱え込む問題ではないですし、企業としてそのようなバックグラウンドを持つ社員をサポートすることが当たり前の社会へと成長しました。そのような社会成長に追いついていない社風の企業も離職を呼ぶブラック企業と言えるでしょう。

労働時間が長く残業が当たり前の環境

人員不足や業務量の多さから、長時間労働を強いる企業も存在します。また、残業を美徳とする古い体質の企業もあります。さらに、定時で退社できるのにも関わらず、上司よりも早く退社するのは気が引ける…その結果、長時間会社に滞在し続けるケースもあります。こうした状況ではワークライフバランスが整わないばかりか、心身のバランスを崩しかねません。政府が「働き方改革」を推進して久しいこのご時世に、こうした条件が揃っている企業はブラック企業と認定して良いでしょう。

職場の人間関係が悪い

離職する理由の中でも1.2を争うのが、人間関係です。パワハラやセクハラ、いじめなど、人間関係が悪化する要因はさまざまですが、それを改善しようとしない企業風土なら、社員が見切りをつけて当然です。チームワークがなく、何か問題が発生したら責任のなすりつけ合いになるような企業も要注意です。

給与が見合わない、昇進や昇給がない

どれだけ頑張ってもそれに給与が見合わず、さらに昇進や昇給がない場合は離職率が高くなります。なぜなら、人は対価がないと仕事のモチベーションを保つことが難しいからです。入社時にきちんと確認しておかなかったとしたらこちらにも非があるとは言え、交渉しても問答無用にはねのける企業であれば今後の見通しは明るくありません。こうした社風の企業であれば、とくに若い社員はまっさきに転職を検討して当然です。

体育会系である

上下関係が厳しく、精神論や根性論を強制するような企業は、合わない人はまったく合いません。体育会系企業には飲み会やサークルなどの社内イベントも付き物で、苦手な方にとっては苦痛でしかないでしょう。体育会系=ブラック企業とは決して限りませんが、苦手な方にとってはブラック企業と言えます。

トップダウンの度合いが過ぎる

ワンマン経営など、トップダウン経営の度合いが高い企業は社員の離職率も高めのようです。同族経営の企業などもそのひとつです。価値観を押しつけられたり、企業の方針が変わることが多々あるので、社員は付き合うだけで精一杯です。仕事に対するモチベーションも上がりません。もちろんトップダウンにはトップダウンの良さもあるので一概にブラック企業認定はできませんが、主体性を持って働きたい方にとっては居心地が悪いことは確実です。

実は離職率と同じくらい気にしたい平均勤続年数

離職率の高さのみでブラック企業であるかどうかを見極めるのは早計であるとお伝えした一方で、組み合わせることでブラック企業である可能性を示唆できる社風のポイントを紹介しました。それに加え、「平均勤続年数」というポイントも合わせて確認しておくと、企業の体質がよくわかるのではないかと思います。

企業自体の年齢が若ければ当然平均勤続年数も短くなり、また新卒社員を多く採用した年が数年間あった場合も同様に平均勤続年数は下がります。しかし、そういった条件がないにもかかわらず平均勤続年数が短い企業には注意したほうが良いかもしれません。先にご説明した社風のある企業である可能性は否定できないからです。

平均勤続年数は、公式ホームページなどで公開している企業もありますし、上場企業であれば有価証券報告書で確認できます。複数の企業を一度に比較したいのであれば、「就職四季報」もおすすめです。さらに、大手就活サイトや口コミサイトに記載があることも。また、転職エージェントに聞くのもひとつの方法です。保有している求人であれば企業の内部事情にも精通していますし、保有でしていなくても転職のプロが情報を収集してくれるかもしれません。

離職率が特に高い業界は?

厚生労働省が発表している「新規学卒者の離職状況」の中に、産業別の離職率データが出ているので詳しく見てみたいと思います。

新規大卒就職者で離職率が高い業界1位は、前述の宿泊業・飲食サービス業で51.5.%、ついで生活関連サービス業・娯楽業が46.5%、教育・学習支援業が45.6%と続きます。全体の離職率31.2%と比較すると、1位との差は1.5倍ほど違うことが分かります。

一概には言えませんが、宿泊業・飲食サービス業などは夜勤やシフト勤務などにより生活リズムを作りづらいため、体調を崩してしまう人もいるのかもしれませんね。

もちろんこういった業界の中でも、離職率が低い企業があることも事実です。離職する理由も、労働時間や福利厚生など企業側に問題がある場合もあれば、思っていたのと違ったりやりがいが感じられないなどというような労働者の意識の問題などさまざまです。

仮に離職率が低かったとしても、重要な役職についている人が辞めていたとすると、企業に与える影響は大きく経営にも支障をきたす可能性も高いです。また企業によっては、キャリアアップのための転職や独立するための退職を積極的に捉えて進めているケースもあるので、離職率が高い=ブラック企業という見方をするのはやめましょう。企業を選ぶ時には、データはひとつの情報として把握しつつ、総合的に判断するようにしましょう。

逆に、離職率が低い業界、企業も多い

逆に、離職率が低い業界や企業に特徴はあるのでしょうか。東洋経済新報社が発行している「「離職する人が少ない大企業」ランキングTOP100 | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース」の2021年版を元に、離職率が低い業界や企業についてまとめてみました。回答社数は1,631社で、そのうち従業員1,000名以上の企業を対象にしています。

電気・ガス・石油などのエネルギー系

私たちの生活に必要不可欠なエネルギー系資源のインフラ業界。
西部ガスホールディングス、J-POWERなど。

医薬品系

医療の発展や高齢化の影響に伴い需要が伸びている医療品メーカー。
ツムラ、日本新薬、持田製薬、小林製薬など。

製造業

日々の生活を豊かにする飲食やゲームなど製造メーカー。
信越ポリマー、栗田工業、やまびこ、東京エレクトロン、森永製菓、J-オイルミルズなど。

運輸業

私たちの生活を支える交通系インフラも含む陸・海・空運業など人や物を運ぶ運輸業界。
商船三井、丸全昭和運輸、日本郵船など。

ちなみに同調査の「離職する人が少ない大企業ランキング100」の2トップである化学メーカー・信越ポリマー、不動産大手・三井不動産は、離職者数が9人。離職率はそれぞれ0.9%、0.6%であり、信越ポリマーに至っては2017年4月新卒入社者の3年後定着率も100%を誇ります。なお、上位100社の平均離職率も1.9%と低値にとどまっており、上位企業には比較的業績が安定している製造業が多いのも特徴です。

今回は、回答した会社のみのデータを元に情報をまとめているため、もしかすると離職率が高い企業が回答を避けている可能性も考えられます。参考情報として頭にとどめつつ、気になる企業については自ら調べたり、転職エージェントに話を聞いてみましょう。

企業側も離職率を下げる工夫をしているところも増えている

離職率が高いと、企業としての評価がさがってしまい採用したい優秀な人材を逃してしまうことにつながります。よって企業は離職率を下げるためにさまざまな工夫をしています。その一例をご紹介します。

エンドレスサマー制度

株式会社ジオコードは、「ユーモア活動」と名付け、8月の夏季休暇に加え、業績の良い社員に限り6月と7月にも約1週間の休暇を取得できる制度を導入しています。
出典:社内制度:エンドレスサマー制度|ユーモア活動|株式会社ジオコード

女性支援制度

株式会社サイバーエージェントでは、女性が出産・育児というライフイベントを通じて継続して勤務できる企業を実現するために、2014年から女性支援のための「macalon(マカロンパッケージ)」という制度を導入しています。このmacalonという言葉は、ママ(mama)がサイバーエージェント(ca)で長く(long)勤められるという意味からだそうです。女性特有の体調不良や、子供の急病の際に備えた休暇制度、在宅勤務制度などが充実しており、離職率を低く保つ工夫となっています。

気になっても、面接で離職率を聞くのは避けた方が無難

ここまで読むと、「やっぱり離職率と企業のブラック度合いは近似しているな…」と思われた方も多いでしょう。先に申し上げた通り、「離職率のみ」で企業の体質を判断してしまうことは早計ですが、確かに判断する1つの指標にはなると言えるでしょう。となると、自分が関心を持っている企業の離職率が気になりますよね。

しかしながら、面接でその企業の離職率を聞くのは社会人としてマナー違反と言えるでしょう。離職率は、企業にとっても頭を抱える問題であり、また突かれたくないポイントでもあります。そういったところを集中的に狙って質問して企業体質を暴こうという行動は、転職という本来の目的を見失っているとも言えます。

そういったことは、転職をする上で良き相談相手となる転職エージェントの担当者に聞いてみましょう。離職率の高さで有名であればそのように教えてくれるはずです。

離職率をはじめとしたマイナスポイントをぼかしたまま、あなたを無理にでも入社させようとしているような意思を感じた際には、転職エージェントそのものを替えてみてもいいかもしれません。おすすめの転職エージェントについては、こちらの記事でご紹介しています。ぜひ参考にしてください。

まとめ:離職率だけでブラック企業扱いするのはナンセンス。総合的に判断を

離職率という言葉は日々メディアを通じて耳にしますが、その正確な計算方法などまでご存知だった方は少ないのではないかと思います。自分で算出する機会はほとんどの方にとってないかもしれませんが、離職率を把握することは転職先の選ぶ上での大切なポイントとなることがおわかりいただけたのではないかと思います。