特定派遣は名ばかり正社員だった!?特定派遣のビフォー/アフターと、派遣社員が正社員を目指す方法

特定派遣は名ばかり正社員だった!?特定派遣のビフォー/アフターと、派遣社員が正社員を目指す方法のイメージ

この記事にたどり着いた方は、転職活動をする中で目にした「特定派遣」という言葉が気になって検索されたのではないでしょうか?その大半は、「派遣社員として働くのはちょっと…」と及び腰の方でしょう。派遣社員とは少し違った雇用形態である「特定派遣」という働き方ですが、現在は事業自体が廃止されているため存在しません。
それでも知識として、特定派遣について学んでおくことは有益です。なぜなら、改めて正社員を目指すきっかけのひとつになるかもしれないからです。この記事では、押さえておきたい「特定派遣」の意味と正社員を目指す方法についてわかりやすく解説します。

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この記事のもくじ

【一番知りたい!】特定派遣は正社員とどこがどう違う?

現在は廃止されている事業とは言え、働き方のひとつとして一瞬でも「特定派遣」を検討した方が一番気になるのが特定派遣と正社員の違いなのではないでしょうか。気になることをポイントに分けてご説明します。

特定派遣とは?

正社員との違いを知る上で欠かせないのが特定派遣について正しく知っておくことです。「特定派遣」とは「常用型派遣」とも呼ばれ、派遣会社が派遣社員と期間の定めのない雇用契約を結び、直接雇用する事業形態のことを指していました。派遣会社の社員として勤務をすることになるので、派遣会社の社会保険に加入することもできましたし、有給休暇なども取得することができました。

また福利厚生も派遣会社の用意したものを享受することができました。特定派遣の特徴として派遣会社との間に定められた雇用契約期間がないので、派遣された先で契約が満了となった場合、もしくは契約が打ち切りになった場合でも無職になることはありませんでした。一般的にイメージされる派遣社員としての働き方との一番の違いと言えるポイントでした。

なお、2015年9月の派遣法改正により特定派遣は廃止されましたが常用型派遣(無期雇用派遣)は健在であり、上記の条件にも変わりはありません。

正社員との違いは何?

正社員と派遣社員で大きく異なるポイントは「雇用形態」です。正社員の場合、就業している会社と直接雇用契約を結ぶことで雇用期間を制限しない働き方ができます。これを「無期雇用」と呼びます。正社員として働く以上、特別な事情がない限り長年にわたって勤め上げられることが大前提となっています。また労働基準法に則った労働環境が提供されることも特徴と言えます。

一方特定派遣の場合には、派遣会社と雇用契約を結ぶことで就業する機会を得ることになり、勤務する先は雇用契約を結んだ派遣会社ではなく、派遣先の企業でした。
一般派遣の場合、派遣先との契約が満了となる、もしくは打ち切りとなった場合には同時に派遣会社との契約も終了となる場合が多く、職を失うことにつながります。

特定派遣の場合には、契約期間の定めがない雇用契約のため、派遣先との契約が完了しても派遣会社との雇用関係は継続され、たとえブランクができたとしても給与は支払われました。いわば正社員のメリットと派遣社員のメリットの両方を兼ね備えた働き方だったということです。なお、現在も継続されている常用型派遣においても同じことが言えます。

特定派遣は正社員でも一般派遣でもない抜け道的働き方

ここまでご説明したとおり、同じ派遣社員という扱いでも一般派遣と特定派遣には大きな違いがありました。また前述の通り、派遣会社の社員として派遣先で勤務することになるので正社員としての勤務ともまた違った働き方となっていました。
正社員として働くとなると懸念事項となる、

  • 同じ人間関係の中で働き続けなくてはならない
  • 違う環境・人間関係を選ぶには転職しか道がない
  • 企業の中で出世の道を探していかなくてはならない

といった点をすべてなくすことのできる働き方が特定派遣です。
また、一般派遣で働く場合に懸念事項となる、

  • いつ契約が終わってしまうかわからない
  • 派遣先との契約が終わったら仕事失ってしまう
  • 次の派遣先が見つからなかったら収入ゼロになってしまう

といった問題も特定派遣という働き方ならばクリアできました。
正社員としての働き方にも、一般派遣の働き方にも心配や懸念のある方にとっては抜け道となる働き方だったのです。

特定派遣が「名ばかり正社員」と言われた理由

正社員や一般派遣と比較するとメリットが多く見えた特定派遣としての働き方ですが、一方で「名ばかり正社員」と言われている実状がありました。どうしてそのように言われたのでしょうか。
それは、ここまで説明してこなかったポイントに原因があります。特定派遣で働く場合には、下記のような懸念点がありました。

  • 派遣先は紹介してもらえても、派遣会社との無期雇用はないので、いつクビになるかわからない
  • 給与は正社員として働くように上がらない
  • 出世・昇進はないので将来設計が立てにくい

まず、特定派遣として働く上で無視できなかったのが年齢です。若いうちはさまざまな現場で、さまざまな経験を積み上げていくことも大切になりますが、30代をピークに継続して培ったスキル・能力がないというポイントは大きなデメリットにつながります。尻切れトンボのように勤務していくと、直接的に収入ゼロになるタイミングはなくて済んでも、昇給することもありません。

また、年齢を追うごとにスキルの低い人物として派遣先の候補も少なくなる傾向にありました。特定派遣として勤務すると、一見正社員と派遣社員のいいとこ取りのように見えますが、実際はこのようなリスクを負っていたのです。これが「名ばかり正社員」と呼ばれた所以です。

特定派遣廃止について

2015年9月の派遣法改正により、特定派遣の事業形態そのものが廃止となったことは軽く前述しましたが、その背景について説明しましょう。

まず、なぜ特定派遣事業が廃止となったかと言うと、特定派遣労働者の立ち位置が不安定だったからです。無期で直接雇用というと安定しているイメージがありますが、その雇用形態は正社員とは限らず、契約社員や準社員なども多く見られました。つまり、正社員の安定とは程遠い立場だったのです。

また、常時雇用ではなく数ヶ月の有期雇用を繰り返し契約するなど、ルール違反を行う特定派遣事業者も続々と現れました。これでは、本来安定雇用が守られるはずの特定派遣も一般派遣と変わりません。

そこで2015年、派遣事業を抜本的に見直すとともに派遣労働者の雇用の安定を図り、特定派遣事業が廃止されたのです。なお、経過措置として2018年9月までは事業を継続できましたが、それ以降は一切認められていません。

特定派遣廃止による影響

特定派遣が廃止されたことにより、①特定派遣事業者②派遣先企業③特定派遣労働者の三者にそれぞれ影響がありました。詳しく見ていきましょう。

①特定派遣事業者

特別派遣廃止により、派遣事業は「労働者派遣事業」に一本化されました。これにより、労働者派遣事業者の許可を国から得ていなかった特定派遣事業者は、労働者派遣事業許可の申請をしなくては事業を継続することができなくなりました(以前は特定派遣事業者の「届出」だけでOKでした)。

そこで、特定派遣事業者が労働者派遣事業者として成立する(国から許可を得る)ためには、下記の条件を満たす必要がありました。

  • 事業所数×1,500万円以上の現預金額、2,000万円×事業所数の基準資産額
  • 雇用管理経験を3年以上持つ派遣元責任者の配置
  • 20平米以上の広さを持つ事務所

この条件を満たせば労働者派遣事業者として再スタートを切ることができましたが、満たせなかった特定派遣事業者は経営の危機に陥りました。

その結果、「偽装請負(表向きは「請負契約」としておきながら、実態は請負発注者側が派遣労働者に対して指揮命令をする、違法な派遣行為)」を行う特定派遣事業者が増加し問題となりました。しかしながら、経過措置が終了した2018年9月以降は経営基盤が健全な事業者のみが生き残っている状態となっています。

②派遣先企業

特定派遣労働者を受け入れていた派遣先企業は、派遣元である特定派遣事業者が労働者派遣事業者の許可を得ているか確認する必要が生じました。これは、許可を得ていない事業者から派遣労働者を受け入れると「労働契約申込みみなし制度(違法派遣を受け入れることで、派遣労働者に直接雇用の申込みをしたとみなす制度)」が適用されてしまうからです。

制度を無視すると罰則の対象となりますし、特定派遣労働者の正社員化が促進された一方で、許可を得ていない特定派遣事業者と契約を打ち切る派遣先企業も多く、特定派遣労働者の人生は二極化しました。

③特定派遣労働者

特定派遣廃止後、特定派遣労働者の選択肢は主に4つ挙げられました。1つ目は、派遣先企業と直接雇用契約を結ぶこと。慣れ親しんだ職場で働き続けられることはメリットのひとつですが、賃金が大幅に下がるなどのデメリットもあったのだとか。

2つ目は、労働者派遣事業を行っている派遣会社に転籍すること。特に、特定派遣廃止をきっかけに大手派遣会社では前述の常用型派遣(無期雇用派遣)制度の採用が進みました。特定派遣と同様の働き方なので、抵抗は少なかったと思われます。ただし、無期の契約ではあるものの必ずしも「正社員」とは限らないため契約解除の可能性もあり、安定雇用とは言いがたいものでした。

3つ目に、経過措置期間は特定派遣事業者に残留し、準委託契約をすることです。しかし上記のように「偽装請負」のケースも散見し、派遣労働者の労働環境が改善されたわけではなかったようです。

4つ目は、転職活動をして、正社員になるという選択肢です。元々特定派遣はIT企業や製造業の技術者の派遣を行う業者を対象につくられたもので、特定派遣労働者は優秀で高度なスキルや資格を持っている人に限定されていました。そのため、特定派遣廃止を機に派遣社員に見切りをつけて転職活動を行い、正社員というキャリアを勝ち取った方もたくさんいらっしゃいます。

現状の派遣社員について

特定派遣廃止以降、派遣の事業形態としては「労働者派遣事業」のみとなりました。現在、労働者派遣事業は、先ほど説明した無期雇用契約の「常用型派遣」と、有期雇用契約である「登録型派遣」の2形態のみとなっています。

厚生労働省の「労働者派遣事業の令和元年6月1日現在の状況(速報)(※)」によると、派遣労働者数は約157万人(対前年比17.3%増)、そのうち無期雇用派遣(常用型派遣)労働者は550,625人(対前年比41.3%)となっており、職種としては情報処理・通信技術者がトップの21.1%を占めています。

今後も、数字だけ見ると派遣社員の安定雇用が守られそうな兆しですが、そうは言っても2020年からのコロナ禍により派遣先企業の休業や契約打ち切りも深刻化し、先行きは不透明です。同時に、雇用が途切れない常用型派遣はさらに競争率が高くなることが予想されます。

現在、安定雇用を目的に派遣会社の移籍を検討している方は、常用型派遣や紹介予定派遣を扱っているかどうか、優良派遣業者かどうかを確認して慎重に派遣会社を選びましょう。

(※)参考:労働者派遣事業の平成29年6月1日現在の状況 |報道発表資料|厚生労働省

なんとか特定派遣から正社員になるにはどうすれば?

上記の理由により特定派遣は廃止されたので、特定派遣と同様の働き方である常用型派遣として現在勤務している方、または常用型派遣を目指している方を対象として話を進めましょう。
このようなリスクを知り、改めて正社員を目指したいと考えた方も多いのではないでしょうか。正社員として登用してもらえるようにするにはどのような点に留意すると良いのかも解説します。
はじめにすべきことは下記の2つです。

  • 正社員登用の制度が存在するのかを必ず確認する
  • 過去にその制度を利用して正社員に登用された実績があるかを確認する

正社員登用の制度があり、そしてまたその制度を利用して正社員登用された実績があることが確認できたら、次に自分自身で努力できるポイントを押さえていきましょう。

  • 派遣会社に紹介予定派遣に派遣してもらえるように依頼する
  • 派遣企業から求められたらすぐに提出できるように履歴書・職務経歴書を用意しておく
  • 正社員登用してもらえるようにスキルを磨く
  • 正社員登用にふさわしい人物としての振る舞いを心がける

以上の方法は、これまでお世話になった派遣会社に力を貸してもらって正社員になる方法です。しかし、そればかりではありません。自ら正社員として就職する方法があります。求人募集に目を通し、正社員募集をしている企業を探して履歴書・職務経歴書を提出してみて、チャンスを少しでも増やすことができれば正社員として働く日もそう遠くないかもしれません。

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まとめ

事業としては廃止された特定派遣ですが、そのスタイルは常用型派遣として現在も根付いています。どんな働き方にもメリット・デメリットの両面があり、メリットばかりがフォーカスされがちですが、物事の両側面を冷静に見た上で判断するようにしましょう。キャリアはとても長い期間築き上げていかなくてはならないものであることを前提に、「今生活するには十分の収入があるから、考えないでも大丈夫!」という安易な考えを持つことは辞めて、正社員として安心できる労働環境に落ち着けるようにがんばりましょう!